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COLUMN

AI時代に技術者が描くべき姿。効率化ではなく「技術者にしかできない仕事」にどれだけ時間を使えたか

2026.11.04

「生成AIで仕事を速くする」という話は、製造業でも当たり前になってきました。けれど技術者にとって本当に大事なのは、AIでどれだけ効率化したかではありません。AIがある時代に、自分がどんな仕事をする技術者でありたいかを描けるかどうかです。その答えは、技術と人とサービスを組み合わせ、まだ世の中にない新たな価値を生み出し、その結果に責任を持つ仕事にあると考えています。

製造業でも、生成AIの活用は半数を超えた

アルサーガパートナーズが2025年9月に公表した調査では、製造業で働く人のうち、生成AIを「積極的に活用している」「一部で活用している」「試験的に導入している」と答えた人は、合わせて51.0%でした。活用している人の87.6%が、業務効率の向上を実感しています。

一方で、活用されている業務の上位は、アイデア出しの補助、文章作成・要約、データ分析・予測でした。どれも、職種を問わずどの仕事にもある作業です。

出典:アルサーガパートナーズ株式会社「生成AI活用実態調査|製造業編」(2025年9月9日公表。調査期間2025年7月22日〜23日、製造業界で働くビジネスパーソン311名)。

効率化だけでは、技術者の価値は変わらない

議事録や報告書が速く書けるようになるのは、大きな助けです。ただ、技術者の仕事の中心は、もともと汎用的な作業ではありません。条件が決まっていない中で判断し、立場の違う人と合意をつくり、まだ世の中にないものを形にする。ここが変わらなければ、技術者としての仕事の中身は変わりません。

効率化の観点でAIを入れても、技術者にとっての効果が限られるのはそのためです。問うべきは「何を速くするか」ではなく、「AIがあることで、今までできなかった何ができるようになるか」です。

AI時代に、自分のあるべき姿を描けるか

AIは、仕事のやり方を変えるだけでなく、技術者に求められる役割そのものを変えていきます。そのときに差がつくのは、AIの使い方の上手さではありません。AIがあることを前提に、自分はどんな仕事をする技術者でありたいのかを描けるかどうかです。

描けていれば、AIで浮いた時間を何に使うかが決まります。描けていなければ、浮いた時間は、また別の作業で埋まっていきます。

新しい技術も、その組み合わせの候補も、AIが出せるようになってきた

新しい技術を生み出すことは、これまで技術者の仕事の中心でした。けれど、材料の候補を探す、設計案を数多く出す、といった仕事は、すでにAIが得意になりつつあります。分野をまたいで論文や特許を探し、技術の組み合わせを提案することも、AIはできるようになってきました。

一方で、AIが出した候補が、そのまま世の中で使われるわけではありません。どの候補を採るのか。誰と組めば形になるのか。お客様にとってどんな価値として届けるのか。それを現実の世界で決め、形にし、その結果に責任を持つのは、人の仕事です。

AIに代わりにくいのは「文脈」「信頼」「責任」

では、AIが候補を出せる時代に、技術者に残るものは何か。次の3つだと考えています。

01現場の文脈

データになっていない現場の知識です。設備のくせ、過去の不具合の経緯、部門ごとの事情など、記録に残っていない文脈を知っていること。

02人との信頼

社内外の人と築いてきた信頼関係です。「この人が言うなら」と動いてもらえる関係は、AIには持てません。

03決める責任

現実の世界で決めて、試して、その結果に責任を持つことです。AIは提案はできても、責任を負うことはできません。

技術者にしかできない仕事は、この3つを生かして、技術と人とサービスを組み合わせ、まだ世の中にない新たな価値を生み出す仕事です。

技術者にしかできない、3つの組み合わせ

01技術を組み合わせる

組み合わせの候補は、AIも数多く出せます。技術者の仕事は、その中から、量産できるか、コストに合うか、品質を保証できるかといった現場の制約を踏まえてどれを採るかを決め、その判断に責任を持つことです。データになっていない現場の知識を持つ人にしか、この判断はできません。

02人を組み合わせる

社内の設計・製造・品質・営業だけでなく、取引先、大学、スタートアップなど社外の人も巻き込み、一緒に形にする体制をつくります。AIは関係者の整理や会議の要約を手伝えますが、信頼関係を築き、立場の違う人の間で合意をつくることは、AIには代わりにくい仕事です。

03サービスのモデルにする

技術や製品を単体で売るのではなく、誰に、どんな価値を、どんな仕組みで届けるのかを設計します。モデルの案はAIも出せますが、お客様に当てて確かめ、リスクを取って決め、実際に動かすのは人です。技術者がすべてを担う必要はありません。けれど、技術が分かる人がモデルづくりに加わることで、技術は事業になりやすくなります。

この3つは、これまでは技術者の仕事の一部にすぎませんでした。AIの時代には、これこそが技術者の価値の中心になると考えています。

KPIは「技術者にしかできない仕事に使った時間」

AIを入れると、「AIを使った件数」や「削減できた時間」を成果として数えたくなります。けれど、それは入口にすぎません。

見るべきなのは、浮いた時間を、技術と人とサービスを組み合わせ、まだ世の中にない新たな価値を生み出す仕事に、どれだけ回せたかです。たとえば、1週間のうち、現場に足を運んで文脈をつかんだり、社内外の人と形にするための対話をしたりした時間はどれくらいあったか。この時間が増えていれば、AIは技術者の価値を高める方向に働いています。

まずは、次の3つの問いから考えてみてください。

Q

今の仕事のうち、AIに任せられる作業はどれか

Q

浮いた時間で、どんな技術や人を組み合わせてみたいか

Q

その組み合わせで、誰にどんな価値を届けたいか

どんな新しい価値を生み出したいかを、言葉にしておく

AIの時代に問われるのは、AIを使いこなす技術よりも、どんな組み合わせで、まだ世の中にないどんな価値を生み出したいかを描き、それを自分で決めて形にできるかです。

それを言葉にしておくことは、今の会社で役割を広げるときにも、これからのキャリアを考えるときにも、自分の軸になります。

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