「自分の市場価値を知りたい」。面談でよく出る言葉です。ただ、市場価値は能力の総量ではありません。需要・希少性・証明可能性という3つの掛け算で決まります。掛け算なので、どれか1つが弱いだけで全体が下がります。逆に言えば、能力を上げなくても価値が上がることがあります。
市場価値は、3つの掛け算で決まる
市場価値を「能力の高さ」だと考えてしまうと、評価が低いときに「自分の実力が足りない」という結論にしか行き着きません。実際には、次の3つで決まります。
需要
その経験を欲しがっている会社が、いまどれだけあるか。自分では動かせない変数です。
希少性
同じ経験を持つ人が、どれだけ少ないか。社内の基準ではなく、市場全体での話です。
証明可能性
その経験を、初対面の相手に示せるか。書類と面接で伝わらなければ、無かったことになります。
3つは足し算ではなく掛け算です。どれほど希少な経験でも、証明できなければゼロになります。
需要は、思っているより強い
まず需要から見ます。転職求人倍率で見ると、2026年8月時点で機械・電気系エンジニアは6.81倍でした。全職種の平均が2.86倍ですから、2倍以上の水準です。1人の転職希望者に対して、約7件の求人がある計算になります。
出典:doda転職求人倍率レポート(2026年8月)。倍率は媒体や集計方法によって変わるため、水準の目安としてご覧ください。
ただし、これは「技術者の需要が強い」という話であって、「あなたの需要が強い」とは別の話です。需要は職種単位では測れますが、個人の価値は、残りの2つで決まります。
希少性は、社内と社外で逆転する
ここがいちばん誤解されている部分です。社内で当たり前にやっていることほど、社外では希少なことがあります。
量産立ち上げを3回経験している。海外工場の立ち上げに最初から関わった。特定の工法で不具合を潰し切った。社内では「それが仕事だ」と言われてきた経験が、外に出ると数人しかいない経験になっていることがあります。
逆もあります。社内で高く評価されている調整力や、社内手続きへの習熟は、会社が変わると価値が落ちます。社内評価と市場価値がずれるのは、この構造が原因です。
いちばん弱いのは、証明可能性
技術者がもっとも損をしているのが3つ目です。理由は3つあります。守秘義務があって具体的に書けない。チームの成果なので自分の貢献が曖昧になる。そして、数字を持っていない。
対処はひとつです。工程名と、数字と、自分が決めたことを書く。「歩留まり改善を担当」ではなく、「歩留まりが計画比8ポイント低い状態を課題として起案し、品質保証部門と合意を取ったうえで条件変更を選んだ」と書く。守秘に触れずに書ける範囲は、思っているよりずっと広いはずです。
自分で点検する、3つの質問
その経験を求人票で探したとき、募集している会社は何社あるか(需要)
その経験を持つ人は、社内に何人いるか。社外ではどうか(希少性)
その経験を、業界を知らない人に3分で説明できるか(証明可能性)
3つ目で詰まる方がほとんどです。そして、そこがいちばん短期間で改善できる部分でもあります。
CAREER WELL BEING
社内で当たり前のことが、外では希少かもしれません。
製造業の技術者としてのキャリアを持つコンサルタントが、3つの軸で一緒に点検します。応募するかどうかを決める前の段階で構いません。