「正直、何がやりたいのか自分でも分かっていません」。面談でこう言われることは、まったく珍しくありません。むしろ、最初からはっきり言語化できている方のほうが少数です。そして多くの場合、その方は少し申し訳なさそうにこれを言います。準備不足だと思っているのです。そんなことはありません。
言葉にならない理由は、語彙ではなく材料
やりたいことが言語化できないとき、原因は表現力ではありません。比較する材料が足りないだけです。
新卒で入った会社に10年いれば、知っている仕事の型は、その会社の型ひとつです。「今の仕事のどこが嫌か」は言えても、「ではどうなっていれば満足なのか」は言えません。比較の対象が存在しないからです。
これは能力の問題ではなく、構造の問題です。同じ人が転職を2回経験すると、突然すらすら語れるようになります。材料が増えたからです。
「未来」ではなく「過去」から探す
では、材料がない状態でどうするか。私たちは、未来の希望を聞くのをいったん止めて、過去の選択を並べるところから始めます。
これまでの仕事で、時間を忘れて没頭したのはどの場面か
逆に、どうしても気が乗らなかったのはどんな作業か
過去に「これは違う」と感じて、自分から動いて変えたことはあるか
職場で、自然と頼まれる役回りは何か
一つひとつは些細な記憶です。しかし10個、20個と並べると、驚くほどはっきりした傾向が出ます。「人と話しながら形にするときに乗る」「決まった手順をなぞる作業で消耗する」といった軸が、ご本人の口から出てきます。
このとき、仕事の話に限定しないことがコツです。学生時代に打ち込んだこと、いま趣味で続けていること、頼まれてもいないのにやってしまうこと。職務の枠の外にこそ、その人の素の傾向は出ます。
希望とは、ゼロから作るものではなく、すでにある傾向を見つけるもの。
「やりたいこと」が無くても、判断はできます
もう一つ、お伝えしたいことがあります。やりたいことが定まらないと転職してはいけない、というルールはありません。
実際には、「今の環境で失われているもの」がはっきりしていれば、判断は十分にできます。裁量が無い。成長実感が無い。年収が上がる見込みが無い。このうちどれが自分にとって致命的かが分かれば、次に選ぶべき環境の条件は決まります。理想の姿を先に描かなくても、順序を逆にすれば前に進めます。
むしろ危ないのは、やりたいことが定まらないまま「とりあえず年収が上がるところ」を選んでしまうことです。入社後1年ほどで、以前と同じ閉塞感が戻ってきます。失われているものが特定できていないと、同じ構造の職場を選び直してしまうからです。
一人で考えると、堂々巡りになります
この整理は、一人でやると難しいものです。自分の記憶を自分で掘るのは、自分の後頭部を自分で見ようとするのに似ています。
株式会社キャリアウェルビーイングの面談では、応募を前提にしていません。「まだ何も決まっていない」という状態から始める方のほうが、むしろ多数派です。転職しないという結論になることもありますし、それで構わないと考えています。
人に話すこと自体が、言語化の最短ルートです。
CAREER WELL BEING
まだ、何も決まっていなくて構いません。
応募を前提としない面談です。製造業の技術者としてのキャリアを持つコンサルタントが、これまでのご経験を一緒に棚卸しします。